美住のすまい⑪ <室内環境の検証>

温度データ

美住のすまい、実際に使ってみての室温の上下がどの程度のものか、温度計を各室に配置して確認してみました。家族が最も多くの時間を過ごす2階のLDK(日射が十分な団らんの場)、窓はあるが日射はそこまで多くない1階寝室、日のあたらない1階脱衣所(非居室)の3ヶ所を対象にしています。冒頭のグラフは横軸を時間、縦軸を室温としてそれらを示したものです。

もっとも寒い1月で測定(最低外気温が0度)し、温度は1ヶ月の平均値で作成しています。なお、水まわりである2階キッチンと1階洗面所が吹抜的な階段により諸室とつながっていてある程度水分を供給しており、湿度は冬に妥当とされる50%以上を概ね保って快適だったので、ここでは問題にしません。

全館空調ではないので、非居室である1階脱衣所はちょっと気温が下がってしまっています。ただ、それは脱衣所を使っていない時で、日中無暖房でも14度以上キープできています。17度ぐらいでも暖房器具なしで裸だと寒さを感じますので、入浴時は1階寝室の暖房を運転させ、脱衣所も入浴前に温めることでカバーしています。

1階寝室は日中いないので、寝る前に暖房で温めてから切り、起きるときにタイマーで少しエアコンをつけています。エアコンはつけっぱなしがいいと聞くことがありますが、朝起きる時と寝る前に限定しこまめにタイマー入り切り設定をして電気使用量を抑えています。

2階のLDK(団らんの場)は、日の出ていない明け方少し暖房をつければ日中は窓からの日射取得でほぼ不要です。暑いと感じた時は断熱性のあるハニカムシェードを上下することで日射を制限し断熱します。ハニカムシェードはそれ自体に断熱性があり上下であける場所も変更できるので、日射を制御するにはとても優れた製品です。LDKが2階にあり外からの視線を気にしないで済むこともハニカムシェードとは相性のよいプランニングと言えます(ただし、シックなインテリアにはちょっと似合わない)。

シェード

さて、一番最初のグラフに戻りますが、人が常時いる居室(グラフのグレーの●が人がいる場所を示す)では、常に17~21℃をキープして快適な温熱環境を実現しています。現代の共働き世帯のように日中は家に誰もいないような状況では、いつも同じ環境を維持するための設備よりも必要に応じてすぐに性能が発揮できる設備、を目指すことが現実的と思います。住宅ローンの金利も上昇し住宅取得が困難になりつつある現状を考えれば、「コスパ」は極めて重要です。ライフスタイルを考慮したタスクアンビエント、という発想で「計画空調」をするのが現実的なところかと考えていますが、エアコンが進化を遂げた昨今ならボタン一つで実現できる話だと思います。

ところで、このエアコンを入れてすぐ温まるというのは断熱気密がしっかりしていないと実現できませんので断熱気密が重要なわけなのですが、今回設定したUa値0.52(窓少なめ)、結露防止シートと気密テープ施工ですぐに室全体が温まることは冒頭のグラフと住んでみての感想で実証できています(コストをかけて窓をグレードアップすれば、さらによくなることは間違いなさそうです)。

また、オール電化ではないですが、電気使用量は電気利用が最も多い12月中旬~1月中旬(正月は在宅で電気を休日並みに使用)で合計417kW、IHを使用する4人家族の住宅としては少ない方で、断熱仕様が次世代省エネ基準+α程度を考えれば十分にコスパよしと言えます。

ちなみに、都市部では1階の日射通風の悪さと洗濯物露出を避ける要望から、乾太くん(衣類乾燥機)がほぼ必須なのでガスを併用していますが、高効率ガス給湯器、乾太くん6kg、食洗器の利用で都市ガス利用が81㎥となっています。これはちょっと多いかと思いますが、どちからかというとライフスタイルの問題(追い炊きが多めだった)で、都市に住むことを選んだ夫婦共働き家庭のランニングコストとして考えています。

室内環境測定2

以上から、この住宅が「費用対効果の高い効率的な断熱気密の家」であることは概ね確認できたと思います。しかしそれ以上に、住んでみて快適に過ごせていることが大切な「事実」と言えます。工事費が高騰する中、コスパのよい住宅を提案する重要性は以前に増して重要です。2025年からは建築基準法における省エネ基準の法改正もありますので、設計標準をさらにブラッシュアップさせて住まいのデザインとコスパの良い省エネを両立させていきたいと思います。

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