美住のすまい② <敷地を読む②>
前回の記事にて、敷地の問題は私道の取り扱い、ブロック擁壁の安全性、駐車場の確保として整理しました。今回はこの敷地へのアプローチを解説します。ただし、容積率が小さくロフトを設けないと必要な面積が確保できないので、建物高さを2.5階分確保できる配置を前提としています。
現状の敷地にあまり手を入れず外構にコストのかからない方法として、南側から駐車する案を検討しました。南側は接道距離が短く、串刺しの形状(敷地にタテに車を入れる)でしか駐車できない状態なので、建物を東側に寄せるか、あるいは、駐車場の上に建物を作るピロティ形状にして建物の床を浮かせる方法があります。
まず、東側に寄せる案(下の検討案①)ですが、この敷地は真北が少し東に傾いていたので、東側に建物を寄せると北側斜線に抵触してしまい十分な建物高さを確保できないこと、また東側に寄せると隣地建物により朝日が入りにくくなってしまうため、この案は諦めました。次に駐車場ピロティ案(下の検討案②)を検討したのですが、ピロティで1階の床面積がかなり削られてしまうことから、必要な面積が確保できませんでした。ピロティは建蔽率の高い地域では有効ですが、今回の第一種低層住居地域のように建蔽率が低い場合にはあまり有効ではありません。


そこで、南側からアプローチするのは諦め、北側道路の活用を検討しました。まず、私道の取り扱いについてリサーチしましたが、この土地の販売を行う不動産屋さんに確認したところ、建築の知識のある担当だったので近隣の皆様より「道路掘削許可」を得てもらっていました。その後、近隣の皆様に設計者として丁寧に追加の説明もしておくことで、私道の問題はひとまず解決しました。
続いて、ブロック擁壁の処理ですが、解体新設はどのくらいコストがかかるか検証したところ、土地の価格にこの費用を加えても相場より少し安価と判断できたので、新たに安全なものを築造することにしました。また、北側ブロック擁壁をどうせ壊すのであれば、ついでに一部土を取り除いてしまってスロープ状の駐車場をつくることにしました。敷地中央に電柱が立っていたのですが、私道に立つ電柱であるが故に敷地内へならば移設できる、というもので簡単には移設できませんでした。敷地が狭くなるのは好ましくなかったので電柱はそのままとし、車の軌跡を念入りに検討することで普通車であれば駐車できるよう、土を取り除く範囲を決定しました。これで北側ブロックの安全性と駐車場確保の両方が実現しました。以上の検証結果が最初に掲載した配置図と下の現場写真です。

これらのことは施主が土地を購入する前に検討したものですが、敷地の特性や建てられる住宅の規模を見定めてから土地の購入を実行します。一見クセのある土地でも建築的な可能性はいろいろありますので、「ここはいいかも?」と思ったら、まずは一度設計事務所に相談いただき、どこまでできるか一緒に考えてみる価値はあると思います。