美住のすまい⑦ <断熱気密>

断熱気密イラスト

断熱仕様についてですが、私たちは特別な依頼がない限り、グラスウールによる通気充填断熱工法としています(ポイントを冒頭の図にまとめてあります)。理由として、正しい施工が求められるグラスウールでも断熱性能を落とすことがないよう注意して現場を見ているから、標準のディテールを設けてそれを実現しつつブラッシュアップをし続けているから、です。

また、設計事務所に依頼する大きいメリットでもありますが、私たちはハウスメーカーや工務店と異なり、複数の施工会社に見積もりを取ることで住宅の建設費を検証しています。特殊な工法というのはどうしても施工会社が限定されてしまい、最大限のコストパフォーマンスを追求することができないので、それを避けることが多いです(グラスウールは施工方法が確立できていれば、誰でも扱いやすい断熱材と言えます)。

今回採用しているのは床下スタイロフォーム、壁天井グラスウールによる断熱設計です。Ua値(断熱性能の指標)は今後スタンダードとなるであろう0.60以下(計算値は0.52で断熱等級5でちょうどいいところの目安)で設定しました。このUa値は計算結果に過ぎず、壁内に湿気が入らないよう室内の「気密」が確保されているか(壁体結露防止)、という点が重要です。

断熱材施工状況

上の写真は室内側の気密シートを施工し終えた段階のものです。室内の気密性については、グラスウールの防湿フィルムの「耳」を躯体にタッカー留めした上に防湿も兼ねた気密シート、そしてコンセントや換気設備のスリーブ部分に気密テープを施すことで確保しています。これにより、室内側の湿度がグラスウールに到達しないので、壁内で結露してしまう「冬型結露」は問題ありません。もう一つの「夏型結露」については、外壁側には通気層を設け、軒に換気部材を設けることで断熱材の外側に上昇気流をつくり湿気を追い出します。

ところで、断熱性能を確保しても建物そのものに魅力がなくなってしまっては本末転倒で、例えば、分厚い断熱材が屋根にあるからといって見付の大きな破風板(壁最上部の部材)がまるで「ハチマキ」のように覆っている、というのは残念なことだと思います。今回は下の写真のように、シンプルでシャープさの表現できる軒ゼロのディテールを採用しています。ただし、軒ゼロといってもほんの少しだけ壁頂部(金属部分)が出ていて、その少し出ている部分に換気部材が配置されています。この部材を納めるために屋根の野地板の出寸法や唐草(板金)の廻し方、樋の高さを念入りに検討しています。なお、軒ゼロは賛否あると思いますが、都内の敷地面積の小ささや斜線制限の厳しさを考慮すれば、少しでも床面積や天井高を広く高く確保する方法として間違いではないと考えています(軒はあるに越したことはないですが・・・)。

ちなみに、他の工務店などのサイトに比べると断熱について少し物足りないと思われた方もいると思いますが、この住宅においては、施主の費用対効果の追求という意向で当事務所の「標準」をベースに設計しております。通常は、総コストと依頼主の断熱気密へのコスト比重を十分にヒアリングし、窓の断熱性能向上(トリプルガラスや樹脂サッシ)や断熱材の密度アップによって「標準」以上の品質(等級6とか)も検討することとしています。

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