ディテールとたわみで考える鉄骨造

たわみと鉄骨設計02

鉄骨造の設計を端的に現した言葉があります。「1にディテール、2にたわみ、3、4がなくて、5に応力」というものです。先日、AFフォーラムで、東京工業大学(現東京科学大学)名誉教授の和田章先生の講演でお聞きしました。この格言に説明を加えると、「1にディテール」というのは、鉄骨造は部材が柱・梁・筋交で構成され、それらの接合方法によって部材の固定度(応力伝達機構)が決まりますが、固定の状態が応力解析の結果と同じとなるように接合の詳細=ディテールを検討する必要があること、ということです。

「2にたわみ」というのは、材料強度が高くスパンを長くして部材のせいを小さくできるので、部材が損傷していなくてもたわみが大きくなり(剛性の不足)、振動障害を起こしたり構造部材に取り付く仕上材がずれて壊れてしまうことがある、ということです。建物の事故の一つとして外装材の脱落が挙げられますが、構造部材のたわみ(変形)に外装材が追従できなくて落ちてしまった、ということもよくあります。落下物は時として人命にも関わりますので、これを左右するたわみの検討の重要性は理解できると思います。

「3、4がなくて、5に応力」というのは応力にあまり重きを置かなくてもよいということですが、ビルもので用いるもう一つの構造の鉄筋コンクリート造に比べ、部材の応力計算(部材の強度(断面積)を求める計算)はそこまで重要ではない、ということを表しています。

「ディテール」というのは「部材の接合方法の検討」と説明しましたが、「梁の掛け方」も部材の応力伝達機構を左右する点で同様で配慮が必要なところです。梁が単独で柱に取り付くのか、連梁として桁の上に載せるのか、ということで同スパン同断面の梁部材であっても、計算結果(特にたわみ)は随分異なります。一例として庇状の部材構成を下に示しましたが、図1の形式の「跳ね出し梁」はたわみにかなり有効となります。

なお、「跳ね出し梁」であれば、庇は屋根の一部となり日本古来の家屋の印象となりますが、構造的に頑張って庇を柱や壁から突き出したデザインとしたのであれば、モダンな印象の建物となります(WORKSにあるイエガタノイエのように)。

たわみと鉄骨設計02

下の写真は実際に屋根の母屋を跳ね出し梁としたものです。深い庇(軒下)、そして軒先の薄いシャープな印象を得るために鉄骨垂木のCチャンネル(部材せい100mm)を2m程度跳ね出しました。2m出しているのでたわみには十分注意が必要ですが、跳ね出している側の反対の部分(上図1の区間①)に屋根荷重が載ることで「重し」となり、先端が持ち上がることで変形を抑えることができています。

実際に部材の配置がされた状況を確認しに行きましたが、部材の大きさと方持ちの出寸法の程度がほどよい緊張感で仕上がっていたのを見て、念入りに検討した甲斐があったなと思いました。

たわみと鉄骨設計03

ところで、下に示すのは構造というわけではないですが、協働した設計事務所(湯本建築設計)の方でよく練られた部分(丁寧な仕事ぶり)だったのでご紹介します。軽快な軒先として見せるべく、先の構造設計で決めた垂木C100の先に重量鉄骨のアングル(L字の部材をアングルという)を取り付けています。Lの部材なので普通は直行方向にはうまくくっつかないのですが、片方の部材の下部を削ることで2つの部材を繋げ、エッジの効いた出隅となっています。注意点を挙げるとすれば、躯体と外装材が一体化してしまう場合は「逃げ(位置の調整代)」がないことですが、仕上材の取り付けに長孔仕様の中ボルトを用いるなど、部材のズレを吸収できるようにしておくことが望ましいと思います。

「1にディテール」というのは、前述したように構造設計における実物と解析モデルの整合性の重要さを示した言葉ですが、このように意匠的なデザインでも鉄骨のディテールというのは大切です。モノ同士の取り付きを考えたディテールにまで目を配ってこそ、鉄骨らしい建築をデザインできると言えます。

たわみと鉄骨設計04

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